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2008年1月10日 (木)

安い旅とは何か。

「もっと安い旅も作って欲しい。」

多くの読者から頂くご意見です。

当社は大手旅行代理店のような「ツアー」を不特定多数の方
に販売するスタイルの旅行会社ではありませんので、
「旅行商品」を「安く」作ることを本業としている訳ではないの
ですが、それでも「安く旅がしたい」方からのご要望が多い
ので、まずは、「安い旅とは何か」について考えてみます。

私も安い買い物は大好きです。
吉野家のファンですし、回転寿司にも行きますし、
百均のダイソーなんて、行くとハマってしまいます。

こないだも、ふらっと入ったダイソーで「靴磨き」を見つけ、
100円かよ、と興奮して3つも買ってしまいました。

帰宅して早速使ってみると、まあ当然ですが
最初のひとみがきで、「壊れて」しまいました。

それでも私はもちろんクレームなんていいませんし、
また懲りずにダイソーのお世話になるでしょう。

では、旅の話です。

安い旅の定義(根拠)は比較的簡単です。

1.広告宣伝のために投入される「施策商品」

2.原価をギリギリまで抑えた「質がそれなり」の商品

3.在庫処分、シーズンオフ対策の「過剰在庫」型商品

4.本来は販売してはいけない「売ってはいけない」商品

主にこの4つに分類されます。

1の「施策商品」は、皆さんのご記憶に新しい、
大手旅行会社がこぞって新聞に全面広告を出していた

「初売り」広告のようなものです。

客寄せのために採算を度外視して販売する商品。
本当はあれでも利益が出せるらしいですが、ここでは
それについては述べません。さすがにそれは彼らの
企業秘密の領域です。

ソウル2008円、グアム2008円…。

最大手の旅行会社までこんなやり方をしているのは
どうかと思いますが、先着○○名の枠に入ればお得です。

担当者に聞いたところ、発売開始から15分で全商品が
売り切れるとのことでした。採算度外視ですから、
ホテルや飛行機の質や時間帯に文句を言う人はいない
はずです。たぶん。

私の靴磨き100円と一緒です。

2の「質がそれなり」の商品がいちばん多く存在しますす。

利用ホテルなどもその地域では最低ランク、飛行機の時間帯も
悪く、羽田空港の集合が朝の5時45分だったりします。

食事なども限られた予算の中では、
読者の皆さんが聞いたらびっくりするくらいの低予算で
作らされたものが提供されます。

北海道のある地方の旅館では1泊2食 3,800円の卸値。
(旅館が旅行会社に卸す値段)

「原価割れ」の仕入を元に格安ツアーは作られます。
だから北海道に行っても道内産の海産物は出て来ないのです。

仕方ありません、
原価をぎりぎりまで落とすのですから。

3.「過剰在庫」商品

季節はずれやシーズンオフは何でも安いのが当然です。

先週、新聞に「○○ホテルに泊まるカナダ」のツアー広告が
出ていましたが、12万円台からの魅力的な価格設定でした。

えっ?あの名門○○ホテルのツアーが12万円。

私も目を疑いましたが、広告を詳細に読んでいくと、
「あ、この時期じゃ、そうだよね。」と納得。

5月のカナディアンロッキー。

私は現地に住んでいましたから良く知っていますが、
この時期は天候は安定せず曇りか雨、時には吹雪になることも。

路面が凍結することも多く、事故も少なくありません。

「宝石のようなエメラルド色」の湖も、
この時期はまだスケートリンクのように凍ったままです。
本当です。

この時期に安いからと言って旅をするのは、
私はお勧めしませんが、
お客さまは何も知らない訳ですから罪はありません。

広告には「この時期には湖は凍っています」
「雪が降ることも多く、観光が中止になることもあります。」

なんて書かれていません。

ここまで極端な例は一部…なら良いのですが、
この手の商品は結構多いのです。

くれぐれも気をつけてください。

ひとつだけ「お得に旅できる」シーズンがあります。

たとえばグアムの12月初旬、ハワイの4月初旬と言った、
「普通は、旅行に出掛けにくい時期」が穴です。

旅行の価格は需要と供給で決まりますから、
供給過多になる「ひとがあまり動かない」時期で、
現地が決して悪くない時期ならお買い得と言えます。

くれぐれも「安い」ツアーに行かれる場合、

その地域が雨季やモンスーンで本来の観光ができなかったり、
逆に雪に閉ざされていたりしていないか、

確認されることをお勧めします。

4.本来は販売してはいけない「売ってはいけない」商品

ミートホープの問題をはじめ、食品偽装があれだけ
世間を騒がせました。
私たちはそこから何を学べば良いのでしょう。

先日、痛ましい事故が再び起きました。
青森県でバスが道路から転落しお客さまが亡くなられたのです。

バスの運転手がチェーンを巻いていなかったとのことで
逮捕され、バス会社には家宅捜索が入ったようです。

新聞は後追い記事を書きませんから、それ以上のことは
伝わって来ませんが、私が何より驚いたのは、
あのバスが「八王子」のバスだったことです。

八王子のバスがどうして青森に?

ツアーは2泊3日で多摩地区からのお客さまをお乗せして、
東北地方の初詣でに行かれていたそうです。

もう一度言います。

多摩から東北までバスで往複するツアーです。2泊3日で。

更に大きな問題が隠されています。
往復の運転を含めトータルで2000キロは走行するで
あろう、バスの乗務員は「ひとり」です。

交代要員を乗せていないのです。

ひとりで「経験の浅い雪道を含め」3日間で2000キロ
走らされる乗務員に命を預けているのです。

私は若いころバス会社でスキーバスの乗務員補助の
アルバイトをしていたことがあるのですが、
バスのチェーンは大変重く、後部の車輪は「ダブル」で
巻くとなると大変な重労働であり、時間も掛かります。

スキーバスなら夜間走行ですから、時間を掛けて
チェーンを巻く心のゆとりもあります。

しかし「日程をこなせないとペナルティを課せられてしまう」ような
忙しいツアーでは、乗務員がバスを止めて、チェーンを巻く
決断すらできなかった可能性があります。

そのくらい、今のツアーは忙しいのです。
バスは無茶な日程を承知でオーダーされ、
雪道でもめいっぱい走らないと、日程が消化できないのです。

どの新聞もバス会社とチェーンを巻かなかったドライバーを
責めていますが、それでは問題が何も解決しないことを、
私たちは覚えているはずです。

大阪で起きた安曇野観光の「スキーバス事故」。
あの事故と同じ構造。
小さなバス会社がトカゲのしっぽ切りになって終わりです。

『もっとゆったりしたツアーを作ればいいのに』

まったくそのとおりです。
では、なぜ「ゆったりしたツアー」はないのか。

簡単です。

そんなお客さま想いのツアーは『まったく売れない』のです。

お客さま想いのツアーは、残念ですが売れません。

安くて、
この値段でこんなにたくさんの場所を観光してお得!

という「無茶なツアー」ほど売れることを、
企画担当者は知っています。

これを「売らんかな主義」と言って済ませるか、
買う側が悪いのか。

私はバスの乗務員さんと話をすることも多いのですが、
彼らは体力的にも精神的にも「限界」に来ていると言えます。

規制緩和で、乗務員の1名運行が可能になった時点で、
バス会社は大変なリスクを負うことになってしまいました。

私たちは、バス1台の手配にすら大変な気を使います。
値段の問題ではないのです、お客さまの命の問題なのです。

それを「判って欲しい」と叫びたくはありませんし、
そんなことをするのは、ナンセンスでしょう。

お客さまは、私たち「企業」を信頼して任せているのです。
その信頼を裏切ることが、どういうことなのか。

お客さまにひとつだけ言わなければいけないこと。
具体的なご提案です。

バス旅行で1日500キロを超えるような走行距離で
(私はそもそもそんな無茶な旅を作りませんが)
乗務員1名運行のツアーには絶対に参加してはいけません。

バスは人間が運転しているのです。
人間は早朝から夜間まで長時間の運転が続けば、注意力は
低下します。眠くもなります。

プロのバスドライバーだから、不眠不休で走れる訳ではない。
そんな当たり前のことが無視されて、商品が作られています。

それは「安くても買ってはいけないツアー」です。

旅行は外から違いが、見えにくい。

グアム3日間 29,800円


このグアムは、十万円するグアムとどう違うのか。
二十万円出す旅行とどう違うのか。

明確に説明すればするほど他社批判になってしまい、
特定の航空会社を悪く言うことになってしまう。

それは嫌なのですが、何しろ違いが判りにくい。
だから、お客さまには

「何となく、おかしい」という嗅覚を敏感にして欲しいのです。

簡単です。

29,800円で外国に行けるなんて、何かおかしいでしょう。
そう思いませんか?

でも、それを具体的に書き始めると、何しろ
「説教臭く」なるのです。

私は、私が靴磨きを100円で買ったように、

「安もの買いの銭失い」になっている間は、
笑い話だと思っています。

旅行は、すでに「笑えない」領域に来ています。


バス会社の組合も機能せず、
大手旅行会社が格安競争に明け暮れ、
メディアも本当のことは伝えにくい事情がある。

誰が悪いとかではなく、どれも仕方のないことです。
それぞれの担当者は、現状がベストだなんて思っていない。

でも、自分の生活があるし、尖ったことをいって干されては
困るし、仕方ないと思っているのです。

だからこそ、消費者が自分の嗅覚を鍛えて欲しいのです。

モノには「相場」というものがあります。

マンション購入でも、賃貸アパートでも、中古車でも、
レストランの食事でも、

相場があります。

感覚的に「安すぎる」ものには何かがあるという、
人間として当たり前の嗅覚を、
どうか忘れないでほしいのです。

それが、あなたや、大切な家族を守ることになるのです。

そして、もうひとつ。

真面目に、正直に仕事をしている企業やお店を
守ることになるのです。


「お客を騙しちゃったもの勝ち」

の日本になってしまうとしたら、

それはやはり「騙しちゃたものがち」の会社の商品を
買ってしまっている、消費者にも責任があると
言わざるを得なくなるのです。

自分を守るのは、自分です。

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